まずは高速化と計算精度

プログラムの実行速度を向上するには、ハードウェアの事を知る必要があります。 スカラマシン、ベクトルマシン、並列マシンの差や、 また、専用の加算機や乗算機を持っているマシン等があり、 それらハードウェアの特徴にあわせなければなりません。 ここではマシンにあまり依存しない基本的な高速化法についてのみ例をあげます。 ベクトル化や並列化等のマシンに依存した高速化の話は簡単では無いので省略します。 どうしても必要な場合には、専門家に相談したほうがようでしょう。

FORTRAN77プログラムの高速化

• 【 演算回数の工夫と演算速度の考慮 】 ( +, - ≦ * ≦ /, **, SQRT )
  
  計算速度は、演算の回数によって決まり、当たり前の事ですが 演算回数を減らす事が高速化につながります。 また、演算の種類によって計算時間が事なっています。 比較や代入等は、他の演算と比較して計算時間はほとんどゼロと言ってよく、 また、一般的に加算(+)や引算(-)より乗算(*)の方が、 乗算より割算(/)や冪乗(**)等の方が、はるかに計算時間が多くかかります。 これを知っているだけでも、プログラムを高速化できます。 以下に同じ式を計算する時でも書き方によって 高速化できるという例をあげます。
  
  (１) 割り算より掛け算の方が高速
  
  

  ×	→	○
  a/2.0d0	→	a*0.5d0
  a/b/c	→	a/(b*c)

  
  (２）多項式の計算 (ax³+bx²+cx+d等)
  
  

  ×	a*x**3 + b*x**2 + c*x + d	(冪乗は掛け算より計算速度が遅い事が多い)
  △	a*x*x*x + b*x*x + c*x + d	(因数分解等でなるべく演算回数を減らす事を心がける)
  ○	((a*x + b)*x +c)*x + d	ok



• 【 メモリアクセスの順番を考える 】
  
  通常の計算機では、同じ演算回数でもメモリアクセスの順番によって 計算速度が変わっきます。ループ等を回す場合には、 なるべく連続したメモリにアクセスする方が速くなります。 例えば、２次元配列にアクセスする場合には、 ２重ループは、配列の内側から回すようにした方がいいでしょう。 (fortranの場合)

  c     この書き方はダメ 
        do 10 i=1,mi
           do 20 j=1,mj
              a(i,j) = b(i,j)+c(i,j)
   20      continue
   10   continue
  c     次の書き方の方が速い(たぶん)
        do 30 j=1,mj
           do 40 i=1,mi
              a(i,j) = b(i,j)+c(i,j)
   40      continue
   30   continue
  

• 【 READ文やWRITE文はなるべく減らす 】
  
  通常の演算等に比べて入出力は桁違いに実行時間がかかるもので、 なるべく無くして必要最小限にした方が良いでしょう。 汎用の行列ソルバーのルーチン等にWRITE文を入れるなんてのはもってのほかです。 (計算がうまく行えなかった場合にそれを知らせる時くらいはいいですが)


• 【 複素数の使用はなるべく避ける 】
  
  複素数の演算が可能なのはフォートランの特徴の一つですが、 複素数の計算は実数に比べて演算速度が遅く、実部と虚部に分けて、 実数で計算した方が速い事が多いようです。

計算精度その他

• 【 総和は小さい数から足す 】
  
  ループを回して足し算をする場合には、小さい数から足した方が精度が上がります。 例えば1/n!(nの階乗分の１)をn=1から10000まで総和を取る場合、 値の小さい1/10000!の方から足した方が精度が良くなります。


• 【 演算や関数を使用する場合、変数の型を合わせる 】
  
  型が違う変数の四則演算等の計算では、処理系によっては、 精度が悪くなったり、処理速度が遅くなったり、 予想外の結果が得られる可能性があるため、なるべくさけた方が良いでしょう。 (最近ではあまり問題にはならないとはおもいますが)

  c     この書き方はダメ ( r:real, d:double, i:integer とする )
        r = r/3 + sin(5)
        d = 3.0d0/i
  c     次の書き方の方が良い
        r = r/3.0 + sin(5.0)
        d = 3.0d0/dble(i)
  c     (dfloatは77に規格に無い)